お腹の痛み(胃痛・腹痛・みぞおち)

胃痛の原因

ストレスの影響で自律神経が乱れる

過労や不安、ストレスなどは、脳と胃の間を取り持ってコントロールしている自律神経の乱れを招きます。
それによって胃酸が過剰に分泌される、胃や十二指腸の機能が低下するなどの状態に陥り、胃痛を起こすことがあります。

暴飲暴食、香辛料や
アルコールの摂り過ぎ

食べ過ぎ、香辛料の摂り過ぎによって、胃の中に食物が滞留すると胃酸過多になります。また、アルコールや香辛料の刺激によって胃粘膜が刺激され、胃痛が起こる原因となります。さらに炭酸飲料なども胃酸の分泌を亢進しますので胃痛の原因となることがあります。

ピロリ菌の感染

ピロリ菌は尿素を分解してアンモニアを作りだして、自分の周りを中和して棲息しています。このアンモニアには毒性があり、その刺激によって胃粘膜が痛めつけられて慢性の炎症を起こした状態になります。
炎症を起こした部分は胃酸から自らを守る機能が低下し、傷つけられてびらんや潰瘍を起こすこともあります。放置すると萎縮性胃炎になり、胃がんのリスクが高まります。ピロリ菌は胃カメラ検査で感染判定をすることができ、除菌治療を行うと胃炎が治まり、胃潰瘍や胃がんの発症リスクは大幅に低下します。

胃痛を伴う病気

急性胃炎

急激に胃の粘膜が炎症を起こし、心窩部痛(みぞおちのあたりの痛み)、悪心(吐き気)・嘔吐、下痢、吐血といった症状が起こります。急性胃炎の多くは薬剤性のもので、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬、抗生物質などが原因物質となります。
次に多いのはアルコール性のもので、並んでストレス性のものがあります。その他にはウイルス感染、アニサキス症などが原因となることもあります。ほとんどの場合、2~3日安静にしていれば治りますが、症状によっては服薬治療や点滴などが必要になる場合もあります。
急激な症状で重症化する可能性もありますので、自己判断で市販の胃薬などを飲んで治めるのではなく、消化器内科を受診してしっかりと原因を特定し、治療するようにしましょう。

慢性胃炎

胃の粘膜で常に炎症が続いている状態が慢性胃炎です。ほとんどの原因はピロリ菌感染によるもので、その他には自己免疫性のもの、胆汁逆流によるもの、薬剤性のものなどがあります。多くの場合、心窩部痛(みぞおちの痛み)、上腹部痛、悪心(吐き気)、げっぷや呑酸(すっぱいげっぷ)、膨満感などの症状があります。
炎症が粘膜表層を繰り返し傷つけて、ただれたり治ったりを繰り返している状態が表層性胃炎、胃の粘膜が修復不可能に傷んで変質してしまったものが萎縮性胃炎です。萎縮性胃炎になると胃がんのリスクが高まりますので、そこまで至らないうちにきちんと治しておくことが大切です。症状に心当たりがありましたら、早めに消化器内科を受診してください。

胃潰瘍

粘膜や皮膚が炎症などで、深層にまで傷が至った場合が潰瘍です。胃潰瘍は、胃の粘膜の傷が粘膜下層に至った軽度のものから、さらに深層にまで至ったものを言います。原因は多くの場合ピロリ菌感染によるもので、続いて非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬などの薬剤性のものなどが挙げられます。
心窩部にキリキリと差し込むような痛みがあり、悪心・嘔吐、膨満感、胸やけなどの症状が起こることもあります。また、潰瘍によって血管に損傷が起こった時は、出血があり、吐血や黒色便などとなります。胃潰瘍の痛みは、食事中から食後に起こることが多いのが特徴です。
早めに治療しなければ、潰瘍が進み胃穿孔などを起こすことがありますので、症状を感じたらお早めに消化器内科を受診してください。

十二指腸潰瘍

十二指腸の粘膜が潰瘍を起こしている状態です。原因はピロリ菌による炎症、非ステロイド性抗炎症薬やステロイド薬など薬剤性のものなどがあり、ストレスが要因となって引き起こされることもあります。
十二指腸潰瘍の痛みは食前の空腹時に感じることが多いのが特徴です。十二指腸の腸管は胃壁より薄い傾向があり、穿孔しやすいため早めの受診が大切です。

胃痛の検査・治療

胃や食道、十二指腸など上部消化管のさまざまな疾患、障害によって起こる症状で、胃痛だけではどのような疾患なのか特定できない場合が多く、問診や触診、検査などでしっかりと原因を特定し、それに合わせた治療を行う必要があります。

問診

いつから、どのように痛むのか、どのようなきっかけで痛むか、他の症状が無いかなどを詳しくお訊きします。

血液検査

血液検査によって炎症反応があるか、感染性の要因があるかなどが分かります。

胃カメラ検査

胃カメラ検査では、食道、胃、十二指腸の粘膜の状態を、医師がリアルタイムに確認することができます。炎症性の病変やポリープなどを発見できる他、疑わしい病変があればサンプルを採取して病理検査を行うことや、ピロリ菌感染に特有の炎症が見つかればピロリ菌感染検査を行うなどができます。
潰瘍などによる出血がある場合はその場で止血処置を行うことも可能です。当院では、内視鏡専門医・指導医の資格を持つ臨床経験の豊富な医師が、最新で最上位の内視鏡システムを駆使して、丁寧でありながら迅速かつ正確な検査で、患者様の負担を可能な限り軽減した検査を行っておりますので、安心してご相談ください。

 

腹痛の症状

腹痛とは、上腹部から下腹部までの幅広い範囲で何らかの障害があって起こる痛みのことを指します。また小腸から大腸、骨盤内臓器など、いわゆるお腹の痛みと表現される下腹部痛を指している場合もあります。
さまざまな疾患によって痛みが生じる可能性があり、それによって痛みを感じる場所や差し込むようなキリキリとした痛み、ずきずきと脈打つような痛み、重い鈍痛など痛みの症状が異なります。
その中でも、できるだけ早く受診した方が良い腹痛の症状としては、突然激痛が起こった、鈍い痛みがずっと続いている、今までに経験したことのないような痛み、動作によって響くような痛みなどです。
また、発熱、下痢、悪心(吐き気)や嘔吐、腹部膨満感、吐血や下血、血便、黄疸などの症状が現れた場合、さらに血尿、めまい・立ちくらみといった貧血の症状、急激な体重低下などがある場合もお早めに受診する必要があります。

腹痛の原因

腹痛の原因は、ウイルスや細菌などの感染によるもの、ストレスや過労から自律神経の乱れが生じて胃腸の機能に障害が起こったもの、冷えなどによって血流が低下することで胃腸に障害が起こったもの、食べ過ぎや刺激物の過多、アルコール飲料の飲み過ぎなどによる一時的なもの、胃腸の器質的な疾患からくるもの、胃腸の運動機能や知覚機能の障害から起こるものなどさまざまです。
一時的なものであれば、しばらく安静にすることで治ることが多いのですが、胃や腸の不調や疾患による症状はどれも似ているため、自己判断せずに消化器内科を受診してください。

腹痛症状を伴う病気

腹痛を症状として持つ代表的な疾患として、次のようなものがあります。

感染性腸炎

ウイルスや細菌などの病原体が腸に感染し、炎症を起こしたものです。主に臍窩部(へそのまわり)や下腹部の痛みの他に、悪心・嘔吐、下痢などが主な症状です。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の粘膜が炎症によって深く傷ついて潰瘍を起こした状態です。心窩部(みぞおち)から脇腹、背中などに痛みを生じます。
胃潰瘍は食中から食後、十二指腸潰瘍は空腹時に痛む傾向があります。

虫垂炎

いわゆる盲腸です。盲腸の先端にある虫垂が何らかの原因で炎症を起こして腫れ上がります。初期には心窩部痛が起こり、悪心・嘔吐が伴うことが多いのですが、だんだん痛みは臍窩部から右下腹部に移動します。
初期のうちであれば抗菌剤で散らすことも可能ですが、重症になると外科手術によって虫垂を切除します。

過敏性腸症候群

腹痛を伴う下痢や便秘といった排便障害があり、その症状は排便によって一時軽快します。そのような症状が続き、検査をしても器質的な異常は認められません。
そんな症状が過去3か月にわたって続いている場合、機能性胃腸障害の一種である過敏性腸症候群が疑われます。腸の運動機能や知覚機能が何らかの理由で障害を起こしていると考えられています。

腸閉塞

手術後の癒着、潰瘍、大腸がんなどによって腸管が狭窄し、物理的に便やガスが通過できなくなってしまっている状態です。
激しい腹痛、膨満感、悪心・嘔吐などが起こります。重篤な合併症のおそれもありますので、緊急に受診が必要です。

腹痛の診断方法

血液検査

問診、触診などの結果から細菌やウイルスによる感染症の疑いがあれば、血液検査で確認します。
その他炎症反応や腫瘍マーカーなどを確認することができ、また、腎機能、肝機能など消化管以外の臓器の働きについてもわかります。

胃カメラ検査

診察によって上部消化管の疾患が疑われるときには胃カメラ検査を行います。食道から胃、十二指腸の粘膜の状態をリアルタイムに確認することができます。

大腸カメラ検査

下部消化管の疾患が疑われる場合、大腸カメラ検査を行います。大腸全体の粘膜の状態をリアルタイムに確認できます。腸炎、腸閉塞、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がん、大腸ポリープなどが確認できるほか、過敏性腸症候群の除外診断にも使用します。

みぞおち(心窩部)の痛みの原因

食事や生活習慣

胃液で溶かされるまでに時間がかかる、脂分、たんぱく質といったものが多い食物や、激辛の香辛料、カフェインといった嗜好品の過剰摂取によって胃に食物が滞留する時間が長かったり、刺激が強かったりすると胃液の分泌が増え、胃粘膜が障害されることによって胃の上部が位置するみぞおちのあたりに痛みを生じることがあります。みぞおちのあたりを医療用語では心窩部と言い、その部分の痛みを心窩部痛と言います。

ストレス

胃腸などの消化管は「第2の脳」と言われることもあるほど、脳と深い繋がりをもっています。脳と消化管をとりもってコントロールしているのは、自律神経です。
脳が過労やストレスなどの影響を受けると自律神経の交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れ、胃の機能が異常に亢進されたり、低下したりします。これによって胃酸が過剰に分泌される、ぜん動運動の機能が低下するなどの状態がおこり、胃粘膜が障害を受けて痛みが生じます。

みぞおちの痛みの症状を
起こす疾患

多くの場合、食道、胃、十二指腸の上部消化管の障害から起こっていますが、中には胆のうや肝臓、膵臓といった消化器、心臓や動脈などの異常が原因のケースがあります。自己判断で胃薬などを飲んで治めてしまわず、症状が続くようなら早めに専門医を受診しましょう。

逆流性食道炎

強い酸性の胃液を含んだ胃の内容物が、食道に逆流し続けることで、胃酸からの防護機能を持たない食道粘膜が炎症を起こして、みぞおちの痛み、げっぷ、呑酸(すっぱいげっぷ)、続く咳、飲みにくさなどの症状を起こします。
食生活や生活習慣に大きく関わりがあり、いったん治っても再発しやすいため、消化器内科でしっかりと治療を続ける必要があります。

急性胃炎

食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎなどによって急激に胃が炎症を起こした状態です。みぞおちのあたりや上腹部に痛みを感じる他、悪心(吐き気)や下痢を伴うこともあります。
急性胃炎の場合、数日安静にしていれば治まることが多いのですが、胃腸の症状はどの疾患でも共通するところがあり、普段と違う痛みを感じたり、症状が続いたりする場合は早めに消化器内科などを受診してください。

慢性胃炎

慢性的に胃に炎症が続いている状態です。原因としては、ピロリ菌感染による炎症が一番多く、続いて非ステロイド性抗炎症薬やステロイド薬などによる薬物性のものが考えられます。
またストレスや過労なども発症のきっかけとなることがあります。心窩部(みぞおち)の傷み、上部消化管の痛み、胸やけ、げっぷなどの症状が現れます。慢性胃炎によって胃粘膜が炎症と修復を繰り返しているうちに、修復が不可能になると胃の粘膜が変質して萎縮性胃炎を起こし、胃がんの発症リスクが非常に高くなります。そのような状態にならないよう、早めに受診してしっかりと治療してください。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の粘膜が炎症によって深く傷つき、粘膜層の下の粘膜下層や固有筋層まで至った状態です。症状としては心窩部(みぞおち)の傷み、胸やけ、呑酸(すっぱいげっぷ)、悪心・嘔吐などの他、胃壁の血管が障害されることで出血し、吐血や黒色便となることもあります。進行して、胃壁に穴が空く穿孔となると開腹手術が必要になる場合もありますので、早めに受診してしっかりと治療することが重要です。

感染性腸炎

細菌やウイルスなどによる感染で腸が炎症を起こします。腹痛、下痢、悪心・嘔吐、発熱などの他に心窩部(みぞおち)の傷みが起こることがあります。原因となる病原体としては、夏は細菌、冬はウイルスが多い傾向があり、細菌としてはサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌のO-157、カンピロバクターなどがあり、ウイルスとしてはノロウイルスなどがあります。
下痢や嘔吐で水分補給ができなければ脱水を起こし、重篤な症状となってしまうこともありますので、水分が上手く摂れていないようであれば早めに受診してください。

虫垂炎

いわゆる盲腸です。最終的には右下腹部の痛みになりますが、初期症状として心窩部(みぞおち)の傷みや悪心があり、だんだん傷みが右下腹部に降りていく傾向があります。

胆石症

胆石が動いて胆嚢の出口にはまり込むと、激しい痛みが起こります。傷む場所は右季肋部(右の一番下の肋骨部分)、心窩部(みぞおち)、右肩、背中などです。
それに伴って悪心・嘔吐、発熱などの症状が起こります。胆のう炎や胆管炎を起こすと黄疸を伴い、時に重篤化することがありますので、早めの治療が必要です。

急性膵炎

膵臓は、健康な状態では自身が作り出す消化酵素によって消化されてしまわないように、防御機能があります。しかし、何らかの理由でその機能が障害され、膵臓が自己消化を始めた状態が急性膵炎です。
原因として最も多いのは大量の飲酒、次に胆石ですが、原因がはっきりわからない特発性の場合もあります。最初は上腹部から心窩部(みぞおち)にかけて激痛が起こり、次第にお腹全体に拡がっていきます。急激に悪化すると命に危険が及ぶ状態にもなりますので、すぐに医療機関で受診してください。

心筋梗塞

心窩部は心臓のある場所です。そのため、心臓の疾患で痛みを感じる場所でもあります。特に心筋梗塞は動脈硬化などで心臓の冠動脈が閉塞し、心臓への血流が滞っている状態で、命に関わる疾患です。
突然、心窩部(みぞおち)から胸部にかけて激しい痛みが起こって、冷や汗、呼吸困難などの症状が起きたら、救急対応で病院を受診してください。
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、メタボリックシンドロームなどの他、喫煙習慣が心筋梗塞のリスクを高めます。

心窩部(みぞおち)の痛みがある
場合はまず受診を

心窩部は心臓や胃、食道など重要な臓器や重要な血管が集中している部分です。
したがって、この部分に傷みがある場合、さまざまな疾患が原因として考えられ、中には命に関わる重篤な疾患もあります。
傷みを繰り返したり、傷みが続いたりしている場合などは、放置せずにできるだけ早めに消化器内科などを受診してください。

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌は、慢性的な胃の炎症を起こし、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどさまざまな疾患の原因となっています。これらの疾患は、症状として心窩部(みぞおち)の傷みを伴うものが多くなっています。慢性胃炎が続けば、そのうち胃粘膜の修復が不可能になり萎縮性胃炎から胃がんの発生リスクが高まります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍は穿孔から重篤化し、大出血により出血性ショックに陥るといった危険性もあります。
これらのリスクは、ピロリ菌を除菌することで確実に減らすことができます。胃カメラ検査や尿素呼気試験などの検査でピロリ菌感染が陽性だった場合は、症状が治まった時期を見て、必ずピロリ菌の除菌治療を受けるようにしましょう。除菌は、2種類の抗菌薬(抗生物質)と1種類の胃酸の分泌を抑制する薬がセットになったものを、1日2回、7日間にわたって服用するだけです。
服用が終わって一定期間を経過しましたら、除菌が成功したかどうかの判定検査を受けていただき(この際に胃カメラ検査は必要ありません)、除菌が成功すれば治療完了、失敗したら抗菌薬を1種類変更して2回目の除菌治療を行います。2回目までを合わせるとおよそ99%近くが除菌に成功します。


監修:名古屋むらもと内視鏡クリニック 栄院 
院長 村元喬

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