機能性ディスペプシアの治療を
行っています
慢性的に胃痛、悪心（吐き気）、食欲不振といった胃の不調が続いていて、検査をしても、炎症や潰瘍などの器質的な症状が見つからないという状態は、機能性ディスペプシアが疑われます。以前ではストレス性胃炎など、心因的な疾患と診断されていたのですが、実際には胃に炎症が無いことから、ストレス性胃炎の治療では効果が得られずに多くの方が悩んでいました。 しかし近年の研究でこうした症状は胃の機能的な問題によって起こっていると解明されてきたことで、薬の開発も進み効果的な治療が可能になってきました。
当院でも、こうした研究の成果によって開発され、承認された「アコチアミド」などを使った効果的な治療が可能です。胃の辛い症状にお悩みの方は一度ご相談ください。
機能性ディスペプシアとは
消化管や内臓の不調が起こるのは、何もその臓器自体に炎症が起こったり、悪い物ができたりした器質性の障害によるものとは限りません。
その臓器が正常に働くための機能に障害が起こった場合にも同様に不調は起こります。特に消化器の不調は、症状がどれも同じようなものが多く、何が悪いかという鑑別は大変難しいものがありました。
長く続く胃の不調があっても、なかなかその原因がわからないまま悩まされていたこの疾患も、近年の研究によって、食物を消化するためにしばらく胃の中に食べたものを溜めておく機能や胃液で柔らかくなった食物を腸に送り出す運動機能、空腹感や満腹感、痛覚などといった知覚機能が何らかの原因によって障害が起こっていることがわかってきました。この状態が機能性ディスペプシアといわれております。
ちなみにディスペプシアとは胃のつらい症状の総称です。なお、機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群は機能性消化管障害（FGID）として一つのジャンルに纏められています。
機能性ディスペプシアの症状
心窩部（みぞおち）痛、胸やけ、悪心（吐き気）、げっぷ、食後の胃もたれ、少し食べただけでお腹がいっぱいになる（早期膨満感）など、上部消化管のさまざまな辛い症状が慢性的に続くことで生活の室（QOL）も大きく低下してしまいます。
機能性ディスペプシアの原因
胃などの消化管は、脳と強い連携で働いています。その間を取り持つのは自律神経です。自律神経が乱れることで、胃の機能が正常に働かなくなります。
胃の機能としては、第一に食物を溜めて（適応性弛緩）胃液によって溶かすこと、第二に溶かした食物を腸の方向へ送ること（胃排出能）があります。この運動機能が何らかの理由で上手く働かなくなって、食後の胃もたれや早期膨満感などが起こると考えられています。
次に、胃や十二指腸などが知覚過敏を起こすことで、ちょっとした刺激に強く反応するようになってしまいます。知覚過敏によって心窩部痛や胸やけといった症状が起こると考えられています。
さらに運動機能の障害や知覚過敏が起こる要因としては、ストレスや生活習慣の乱れ、喫煙や多量の飲酒、脂質の多い食事による胃酸過多などが挙げられ、さらにピロリ菌感染によっても機能性ディスペプシアが起こりやすいとされています。
機能性ディスペプシアの診断
消化器の疾患は、どれも同じような症状を起こすことが多いため、症状をお訊きするだけでは、確定診断ができません。そのため機能性ディスペプシアかどうかは、食道、胃、十二指腸に器質的な異常が無いかどうか、一つ一つ除外診断をしていく必要があります。
この除外診断を一度にできるのが、胃カメラ検査です。胃カメラ検査では、同時にピロリ菌感染も調べることができます。また、肝臓、胆のう、膵臓といった周辺の臓器に不調がないかどうかは、血液検査や腹部エコー検査によって確認します。
当院では、内視鏡専門医・指導医の資格を持つ臨床経験の豊富な医師が、最新で最上位の内視鏡システムを駆使して、丁寧でありながら迅速かつ正確な検査で、患者様の負担を可能な限り軽減した検査を行っております。安心してご相談ください。
機能性ディスペプシアの治療
基本的には、症状の改善に役立つ薬物療法と、自律神経の異常の原因となっている生活習慣やストレス等の改善の両面から治療を行います。薬物療法では、2013年にアコチアミドという胃の運動機能を亢進する新薬が、機能性ディスペプシアに対する適応が認められ承認されました。
これにより、以前は胃酸を抑える薬や消化管運動改善薬などで行っていた治療が、より効果的に進められるようになっていますので、症状にお困りの方は一度ご相談ください。
生活指導
食べ過ぎ、脂っぽい食物や香辛料などの過食、お酒の飲み過ぎといった食事内容、不規則な食事時間や生活の是正などの指導を行います。
また、ストレスも悪化要因ですので、適切な休息、規則的な睡眠習慣、軽い運動などストレス解消の指導も行います。
薬物療法
アコチアミドのほか、胃酸分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬（PPI）やヒスタミンh3拮抗薬（h3ブロッカー）、消化管運動を改善する薬などの他、症状によって漢方薬の処方なども行っています。
また、ストレスなどの影響が強く見られる場合、自律神経を整えるために時期を限って抗うつ薬や抗不安薬などを処方することもあります。
監修：名古屋むらもと内視鏡クリニック 栄院
院長 村元喬
